働き方・両立2026-07-23監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

通院と仕事を両立する時間管理と会社への伝え方の実務ガイド

この記事の要点

「次の通院、有給を使うか、それとも早退にするか、正直迷っています」——先週、ある方からいただいた相談です。

結論から言うと、通院と仕事の両立でつまずく人の多くは「制度を知らない」のではなく「制度を使うタイミングと伝え方を決めていない」だけだと僕は考えています。厚生労働省の障害者雇用実態調査(厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」)でも、通院配慮を含む勤務時間の調整を受けている障害者雇用の労働者は一定割合存在すると報告されています。つまり通院と仕事の両立は個人の工夫だけでなく、会社側の制度と組み合わせて考えるべき領域だということです。この記事では、通院ペースの見える化から、会社への伝え方、実際に使える制度、今日からできる準備、そしてよくある失敗までを、僕の体感値と合わせて整理していきます。

0. まず整理すべきこと:通院は「例外対応」ではなく「勤務条件の一部」

通院と仕事の両立を考えるとき、多くの方が「通院のたびに会社に迷惑をかけている」という感覚を持ちがちです。僕自身、最初にキャリア相談を受けたときによく聞くのがこの言葉です。ですが個人的には、この前提そのものを見直す必要があると考えています。通院は体調管理という業務遂行の土台であって、突発的な例外対応ではありません。たとえば経理担当者が月末の締め作業をスケジュールに組み込むのと同じように、通院も「毎月・毎週発生する固定業務」として最初から勤務設計に組み込んでしまう方が、結果的に会社側の理解も得やすくなります。僕の体感値で言うと、通院を「その都度お願いする特別対応」として扱っているケースほど、上司との調整に毎回エネルギーを使い、疲弊してしまう傾向があります。逆に、入社時や配属時点で通院の頻度を勤務条件の一部として共有できている方は、通院日を理由に評価が下がったり気まずさを感じたりする場面が少ないという印象を持っています。まずは「通院は迷惑ではなく、あらかじめ組み込む前提条件だ」という認識の転換から始めることをお勧めします。

1. 通院ペースを見える化する3つの視点

会社に伝える前に、まず自分自身が通院ペースを把握できているかを確認しておく必要があります。僕がキャリア相談で必ず確認しているのは次の3つの視点です。

この3つを整理するだけで、会社に説明するときの説得力がまったく変わってきます。「毎週水曜の午後に通院しており、往復と待ち時間を含めて2時間程度を目安に確保したい」という言い方は、単に「通院があるので休みます」というより、会社側が勤務シフトを組む上で扱いやすい情報になります。個人的には、通院直後の体調変動まで共有できている方は少ないと感じていますが、ここを伝えられると「通院後の1時間は重い判断業務を避けてほしい」といった配慮の相談にもつながりやすくなります。逆にこの見える化ができていないと、会社側も「どのくらい配慮すればいいのか」が分からず、結果的に過剰に気を遣われたり、逆に何も配慮されなかったりという極端な対応になりがちです。

2. 会社への伝え方:伝える範囲とタイミングの判断基準

通院の伝え方には、大きく分けて「入社前・配属前に伝える」「入社後、必要になった時点で伝える」の2つのタイミングがあります。個人的には、通院が定期的で今後も継続する見込みが高い場合は、選考や配属決定の前段階で伝えておく方が結果的にトラブルが少ないと考えています。理由は単純で、シフトや業務量の設計は配属が決まった後だと変更しにくいからです。一方で、通院頻度がまだ不確定な場合や、治療方針が固まっていない段階では、まずは直属の上司や人事の担当者一人に共有し、業務全体には広げないという範囲設定も有効です。伝える内容については、病名そのものより「いつ・どのくらいの時間が必要か」「その時間中に何が起きるか(連絡が取れない、集中力が落ちるなど)」を中心に説明する方が、会社側は具体的な対応を検討しやすくなります。僕がこれまで見てきた中では、通院理由を詳細に説明しすぎてプライベートな情報まで開示してしまい、後から「話しすぎた」と感じている方もいらっしゃいました。伝える範囲は自分でコントロールできる、という前提を持っておくことも大切だと思います。

3. 使える制度と合理的配慮の実務

通院と仕事を両立するために使える制度は、会社の就業規則や業界によって差がありますが、代表的なものを目安として挙げておきます。

制度内容の目安向いているケース
時差通勤始業・終業時刻を前後1〜2時間の範囲でずらす通院が午前中や夕方に固定されている場合
時間単位休暇1日単位でなく1〜2時間単位で休暇を取得通院時間が短く、半休では余ってしまう場合
時差勤務+在宅併用通院前後だけ在宅にして移動時間を削る通院先が自宅から近く、出社の往復が負担な場合
オンライン診療の活用診察の一部をオンラインに切り替え、通院回数自体を減らす主治医がオンライン診療に対応している場合

これらはあくまで独自ガイドとしての目安値であり、実際に使えるかどうかは会社の制度設計と主治医の判断に依存します。合理的配慮として時間単位休暇や時差通勤を求めることは、障害者雇用促進法上も権利として認められている領域ですが、僕の体感値では「制度としてあるのに使われていない」ケースが少なくありません。理由の多くは、本人が「みんなが使っている制度ではないから言い出しにくい」と感じてしまうことにあります。ですが通院配慮は特別扱いではなく、業務遂行を継続するための前提条件だと捉え直すと、申請へのハードルも下がってくると思います。

4. 今日からできる実務アクション:通院スケジュール表の作り方

ここからは、今日から手を動かせる実務的な準備を整理します。難しいツールは不要で、紙のカレンダーやスマホのメモでも構いません。

  1. 直近3か月分の通院予定を書き出す:固定曜日がある場合はそれを、不定期の場合は目安の頻度(例:月1〜2回)を書く。
  2. 1回あたりの所要時間を記録する:移動・待ち時間・診察・薬の受け取りまでを含めたトータル時間を、実際に1〜2回計測してみる。
  3. 通院後の体調変化を1週間だけメモする:通院直後、当日の夜、翌日の3タイミングで体調をメモし、業務に影響が出やすい時間帯を把握する。
  4. 会社に伝える内容を1枚にまとめる:頻度・所要時間・希望する配慮(時差通勤や時間単位休暇など)を箇条書きで整理する。
  5. 伝える相手と順番を決める:直属の上司から先に伝えるのか、人事担当を通すのか、会社の相談窓口の有無を確認しておく。

このプロセスを踏むと、いきなり口頭で「通院があるので配慮してほしい」と伝えるよりも、具体的な数字とともに相談できるようになります。僕の体感値では、この1枚のメモを作った状態で相談に行った方は、会社側からの質問にその場で答えられるため、面談自体が10〜15分程度で終わるケースが多いという印象があります。逆に準備なしで相談すると、会社側が判断材料を持たないまま持ち帰りになり、結論が出るまで数週間かかることもあります。

5. よくある失敗とその対処

通院と仕事の両立でよく見られる失敗パターンを、僕がこれまで相談を受けてきた範囲で3つに整理しておきます。

失敗パターン1:通院を隠して有給休暇や欠勤で処理し続ける。短期的には楽ですが、有給が尽きた時点で急に欠勤扱いが増え、評価面談で「勤怠が不安定」と指摘されるケースがあります。対処としては、早い段階で通院の存在を最低限(直属の上司まで)共有し、有給以外の選択肢(時間単位休暇や時差勤務)を確保しておくことが有効です。

失敗パターン2:通院内容を詳細に説明しすぎて、周囲の見る目が変わってしまう。プライバシーへの配慮から病名や治療内容を細かく話す必要はなく、「いつ・どのくらいの時間が必要か」という業務上の情報に絞ることで、必要以上の詮索を避けられます。

失敗パターン3:制度はあるのに申請せず、体調を崩してから初めて相談する。結果的に休職に近い状態まで悪化してから相談することになり、会社側も急な対応を迫られて調整が難しくなります。個人的には、体調が安定している時期にあらかじめ制度を確認し、実際に困る前に一度使ってみることをお勧めしています。制度は「使ってみて初めて使い方が分かる」ものだと思います。

6.(結論)通院と仕事は「対立」ではなく「設計」の問題

通院と仕事の両立は、体調と業務のどちらかを犠牲にする二択ではなく、あらかじめ設計しておけば両方成立させられる領域だと僕は考えています。頻度・所要時間・体調変動を見える化し、伝える範囲とタイミングを自分でコントロールし、時差通勤や時間単位休暇といった制度を「特別扱い」ではなく前提条件として使う。この積み重ねが、長く安定して働き続けるための土台になります。皆さんいかがでしたでしょうか。通院のたびに気まずさを感じているなら、まずは直近3か月分の通院予定を書き出すところから始めてみてください。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 通院のたびに有給を使うべきですか?

有給だけに依存すると、有給が尽きた時点で欠勤扱いが増え、評価面談で勤怠を指摘されやすくなります。時差通勤や時間単位休暇といった制度を早めに確認し、有給と組み合わせて使うことで、通院を理由に評価が下がるリスクを減らせると考えています。体調が安定している時期に一度制度を使ってみておくと、実際に困ったときに慌てず申請できます。

Q. 通院のことは面接や配属前に伝えるべきですか?

通院が今後も継続する見込みが高い場合は、選考や配属決定の前段階で伝えておく方が、シフトや業務量の設計を後から変更する負担を避けられると考えています。頻度がまだ不確定な段階では、まずは直属の上司や人事担当者一人にだけ範囲を絞って共有し、業務全体には広げないという判断も有効です。伝える内容は病名よりも、いつ・どのくらいの時間が必要かという業務情報を中心にすると相手も対応を検討しやすくなります。

Q. 通院と仕事を両立するために使える制度にはどんなものがありますか?

独自ガイドの目安としては、時差通勤・時間単位休暇・時差勤務と在宅勤務の併用・オンライン診療の活用という4つが代表的です。どの制度が使えるかは会社の就業規則と主治医の判断に依存するため、まずは自分の通院頻度と所要時間を整理したうえで、人事や上司に相談してみることをお勧めします。合理的配慮としてこれらを求めることは、障害者雇用促進法上も認められている領域です。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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